最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)400 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人中村荘太郎の上告理由第一点について。
論旨は、原判決に採証法則違反、理由不備、審理不尽、罹災都市借地借家臨時処
理法二条の解釈を誤つた違法があると主張する。
しかし、原審挙示の証拠による原審の所論事実の認定は、これに首肯し得られ、
この事実に基き原判決が、被上告会社を所論罹災建物の賃借人と認定し、罹災都市
借地借家臨時処理法二条の適格者として所論敷地の優先賃借権を有するものとした
原判決は正当であつて、これに所論の違法はない。
論旨は、結局、原審の適法なる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰する
のであつて、これを採用し得ない。
同第二点について。
論旨は、原判決に法令の解釈を誤つた違法、審理不尽、理由齟齬の違法があると
主張する。
仮に所論の如く、訴外Dに罹災都市借地借家臨時処理法二条一項但書所定の事由
があつたため、同項本文による被上告会社の借地申出が無効であつたとしても、こ
れを援用する上告人は、自らその無効とその事由とを主張する義務があるものとな
すべきである。然るに被上告会社の本件借地申出当時、権原により建物所有の目的
を以て本件土地を使用する者が既に居り、被上告会社の右申出が無効であつたこと
については、原審において上告人が主張した形迹は、全くこれを認められない。さ
れば、この点を考慮することなくして被上告会社の本件借地申出を有効と判断した
原判決に、何等所論の違法はない。
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論旨は、理由がない。
同第三点について。
論旨は、原審に当事者の申立てない事項に基いて判決した違法があると主張する。
しかし、被上告会社が、原審において抗弁として、被上告会社と訴外Dとは、罹
災都市借地借家臨時処理法二条により、罹災建物の共同賃借人として、本件借地の
申出をなし、これにより、本件土地の賃借権を取得したと主張したのに対し、原審
は、罹災建物の滅失当時、賃借人は被上告会社であつて、同会社は、右処理法二条
に基き、借地の申出をなし、これにより、本件土地の賃借権を取得したと認定して、
被上告会社の右抗弁を認容しているのであつて、原審の認定は、被上告会社主張の
範囲内のものであり、その間に事実の同一性を欠くものともいえないから、原判決
には、所論の如き違法はない。論旨は、採用し得ない。
同第四点について。
論旨は、原判決に著しい釈明権不行使による審理不尽の違法、法令違反があると
主張する。
本件土地上に被上告会社の取得した所論賃借権につき、既に右処理法七条に基く
解除権が発生して居る事実及び右賃借権が他に譲渡せられて、被上告会社には存在
しなくなつた事実等は、原審において上告人の主張しない所である。若しこれらの
事実が存在し、これを援用する訴訟上の利益があるならば、上告人自らこれらの事
実を主張し立証する責任を負担するのであつて、裁判所においてその存否を釈明す
る必要のあるものではない。上告人は、原審がその釈明をしなかつたことを前提と
して、原判決に所論の違法があるとするのは失当である。
論旨は、理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
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最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 石 坂 修 一
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
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